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主に映画の感想を書いているブログです

鍵 (1959) [日] 市川崑監督

古美術の鑑定家の初老の男とその妻、娘の関係を描いた人間ドラマ。谷崎潤一郎の小説が原作である。度々映像化されている作品だが、本作はその最初の映像作品となっている。

正直言って面白い。映像、内容ともにレベルが高い作品である。シーンの切れ目を数秒ストップモーションさせたり、やたらに暗い室内の光による演出や俳優の不気味な表情の捉え方など、独特の映像美がある。

夫婦間にしても、その娘と恋人の関係にしても、これがまた独特である。意図的に自分の妻と他の若い男を接触させようとしたり、恋人同士で結婚の予定まであるのに全く仲が良くなかったり、理解し辛いのだが、それぞれの心情がよく描けている為に説得力がある。

これだけの変人ばかりの人間ドラマというのも珍しいだろう。しかもそれらが説得力をもって描けているのだから凄い。第三者的立場として登場する使用人のお婆さんが唯一普通の人だが、最後の最後でやっぱり「変人」の一員に加わってしまうあたり、本作の徹底した人物へのこだわりを感じさせる。ただの使用人では決して終わらせないのである。

この種の人間ドラマを重視した作品はストーリー自体は面白くない場合が多いが、本作はストーリー自体も面白い。最後まで退屈せず観られるサスペンス的展開である。伏線がある為、ある程度は予想の付く結末であるが、それでも最後まで観て確認せずにはいられない。それだけ登場人物たちに魅力があるからだろう。

 

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