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主に映画の感想を書いているブログです

たまこラブストーリー (2014) [日] 山田尚子監督

幼馴染み同士の高校生の恋愛ドラマ。主人公の女の子は卒業後は家業を継ぐ予定。相方の男の子は遠方の大学に進学予定。よって、離れ離れとなってしまう。あせった男の子は告白し、女の子は動揺してしまう。

星の数ほど描かれた王道のパターン。確かに新鮮味はない。独創的とは程遠い内容である。通常なら退屈するところ、本作は心地良く眺めていられる作品に仕上がっている。

その理由の一つとして登場人物たちが皆当たり障りのない言動しかしない事が挙げられる。事件と言えばメイン男女の告白劇くらいである。これにしても何かの邪魔が入るといったこともなく、障害と言えば本人たちの不器用さくらいである。

映像もなかなか良かった。キャラクターはいわゆるアニメ絵の簡略化されたデザイン。線は多い方であり、やわらかいタッチが少し古臭くもあり、野暮ったい感じである。しかし、本作のような地味な青春ドラマを描くにはこれがマッチしていた。人物画を邪魔しないすっきりとした背景も悪くない。昔の映写機で映し出したかのように画面の端をぼかしたり、同じ人物でも顔にだけピントが合って他の体の部分がぼけたりと、細かいテクニックも面白い。

本作はTVアニメ作品の映画化という事だが、TVアニメを見ていないと理解出来ないという作品ではない。単純明快な内容であり、登場人物も多いが、初見であってもそこそこ理解出来る仕組みとなっている。

ただ一つ注文を付けるとすれば糸電話の扱いである。本作のストーリーではこれが重要なアイテムとなっている。ヒロインは家業の手伝いをしたり、バトン部の練習をしたりするシーンが結構あるのだが、少し無駄に感じる事も多かった。こういったものをだらだらやる時間があるなら、物語上キーとなるアイテムである糸電話を使用するシーンをもっと描くべきだったと思う。

直接言い辛い事でも糸電話だったら話せるといったメイン二人の関係がこの映画作品単体では今一つ描き切れていなかったと思う。全く駄目という事もなかったのだが、糸電話というのはあまり一般的なアイテムというわけでもないのだから、もう少しくどいくらいに使用する場面があっても良かった。糸電話=二人だけのコミュニケーションツールという説明である。それでこそ、クライマックスのシーンが生きて来る。

奇をてらうことなく、オーソドックスな手法で、言いたい事を素直に表現している。物凄く面白いとか感動するといった作品ではないが見ていて心地良い佳作と言える。