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主に映画の感想を書いているブログです

ノック・ノック (2015) [チリ・米] イーライ・ロス監督

不倫行為をした妻子ある男の悲劇。粗筋だけ書くと実にありふれたものである。しかし、本作は異様な作品だ。狂人によって主人公が痛め付けられるという作品はいくらでもあるが、本作の特異性はその陰惨さにあるわけではない。

雨でずぶ濡れの女二人が主人公の家に訪ねて来る。目的地にたどり着けず困っているらしい。厚意から二人を室内に招き入れるも誘惑に負けて不倫行為をしてしまう。

実によくあるシーンだ。星の数ほど描かれたパターン。ここまでは普通。わりと自然だし、誘惑に負けた主人公にも共感するくらいである。相手の女からしてもちょっと格好良い男相手に遊んだという事で実に納得が行く。

しかし、ここからが問題だ。女二人は不倫をネタに脅迫しながら居座り嫌がらせをして来る。この辺りからこの女二人の心情が理解出来なくなる。ただの狂人と化す。主人公を縛り付けたり、関係ない第三者に対しても同様の行為をする。家の中を滅茶苦茶に破壊したりもする。

狂人でも良いのだが、もしそう描くならやはり納得の行く理由が必要だ。たとえば、この女二人の家庭環境が劣悪で精神がおかしくなった等。それがいつも私が言っている人間を描くという事なのである。少なくとも、本作はこの部分は出来ていない。だから納得出来ないのである。

その他いろいろ納得出来ない部分があった。都合良く主人公には肩の傷という弱点があったり、主人公の家に訪ねて来た男もまた喘息という弱点を抱えている。その男も自ら転んで頭を打ったり、都合良く家から拳銃が見付かったり。女二人が二度目に主人公の家を訪ねて来た時の対応も不用心過ぎるし、一撃で気絶させるというのもプロの格闘家じゃあるまいし。

しかし、本作の主張はブレない。不倫行為をした人間が悪い。ただこの一点に集中している。確かにそうだが、同意して行為した相手にここまでの嫌がらせを受ける筋合いはないし、関係ない第三者が結果的には死んでいるのも筋が通らないだろう。対象が主人公だったらまだ分かる。

こういった点が本作の特異な部分である。単に主人公が拷問されるという作品ではないのだ。むしろ、主人公は縛られたり多少殴られたりフォークで微妙に刺されたり地面に埋められたりもするが、回復不能な障害までは負わされていない。つまり、拷問部分は実は大した事はないのである。

私は随分甘いと思いながら観ていた。狂人だったらもっと陰惨な行為をしても良さそうだが、この辺りの中途半端も所詮はB級作品という事かもしれない。